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建売の建物

昔から建売の建物というのは、安普請だと相場が決まっている。
それは現在でも変わらない。

昔に比べたら建築の基準が厳しくなったから、比較にならないほど強度は増している。
しかし仕事の面ではお粗末なのは変わらない。

全部が全部ではないけれど、大工の腕が悪い。
大工曰く、「大六」だとの事。

建売を建てている大工の中には、手の良い大工もいるが、酷いのが多い。
建売の大工は、墨付け、刻みが出来ないのは勿論の事、和室の造作が出来なくて当たり前。
階段を作れない大工も混じっている。

時間に追われているから当然掴み仕事。ひとつひとつ材料を吟味している暇は無い、
ってか、材料を吟味すると言う事事態知らない大工、いや大六も居る。

躯体はある程度工場で組んで来るから、現場作業は組立作業。
だから上棟(建前)は大工では無く、鳶が組んでいる。
勿論上棟した後の修正や養生なんかやらない。

今は筋交いを使わない構造用合板で耐力壁を作るんだけれど、
それすらも工場で組まれて現場に納められる。

だから躯体は上棟というより、組み立てだ。木造プレハブ住宅と言えば分かりやすい。

俺が監督をやっていた頃は、野地板を貼った後、合わせ目にコーキングを打った。
所が建売は鳶が野地板もあるから、コーキングを打たないのは勿論の事、
多少隙間があっても修正しない。
なぜなら、野地板も予め工場で加工されて来たものを貼るだけだから。

いくら工場で正確にカットしても、木造住宅だから現場で狂いが出る。
その狂いが隙間となる。
昔の大工なら、狂いを修正して隙間が無い様に野地板をはり、合わせ目にはコーキングを打つ。

所が時間に追われる建売建築はそんな事はしない。
万一屋根材から雨漏りしても、アスファルトルーフィングが雨漏りを防ぐから、
いちいちそんな手の込んだ事はしない。10年持てば良いのだから。

屋根下地の仕事ひとつとってもそんな感じだから、他も推して知るべし。
あんな仕事見てたら絶対に建売なんか買わない。

近年価格の安いハウスビルダーも同じように建築している。
だから3ヶ月で家が完成してしまう。

大工だけでは無い。他の職人も手が荒い。
基礎屋は碌に養生しないで枠を外してしまう。

足場屋は足場を解体する時に、建物に傷を付けても平気。

監督も完全に職人にナメられていて、言うことを聞かないし、
監督も職人に何も言わない。

建売の実行単価は、坪単価30万円以下。
だから職人に支払う手間も少ない。しかも半年先の手形。

そんなんだから、碌な職人が集まらない。
手の良い職人は、もっと単価の良い所へ流れてしまう。
手の悪い職人が集まって建てるのが建売の建物。
出なけりゃ坪単価30万円以下なんて価格では家は建たない。

ウチでやっている建売(売建)の建物は、
引き渡し時の立ち会いで、クレームはまず無い。
入居後のクレームもひとつかふたつ、それも大した事は無い。
大概は建具の調整程度だ。

所が、先日立会いした建売の建物では、
クレームが34箇所。傷は勿論、立て付けの悪さは当たり前。
床鳴り、歪のオンパレード。

思わず
「建売の建物なんて、こんな物ですよ。」
と客に言いたくなる。

そんな建物が今日も建築され、客は知らないで買う。
10年は雨漏りしないだろうけど、古くなったら保証は出来ない。
それが現代の建売の現状だ。


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