勝手にぶつぶつ
増える孤独死案件
ある分譲集合住宅で孤独死があった。
部屋は家族の手配で特殊清掃が行われた。
ウチに依頼があったのは、孤独死があった部屋から下までの階段を消毒してもらいたいと言うものだ。
消毒と言っても、別に階段が汚れている訳では無い。
聞けば、住人の気持ちの問題なのだそうだ。
なので噴霧器で消毒薬を噴霧する事にした。
ウチの会社にも、毎年とは言わないものの、一年おきぐらいに孤独死の案件が入ってくる。
発見が早ければ問題ないが、悲惨な状態で発見された物件は事故扱いになってしまう。
特に気温が高い時期は遺体の腐敗が早い。
実はウチの事務所の隣も、15年以上前になるが孤独死があった。
死後三日程度経っていたが、秋だったので遺体の損傷は殆ど無く、特殊清掃の必要も無かった様だ。
知らない間に売りに出され、今は若夫婦が居住している。何の問題も無い様だ。
老人の一人暮らしが増えていて、
足腰が弱った老人は外出もしないから亡くなって居ても外からは分からない。
ヘルパーさんが来ていたり、新聞を取っていたりすれば発見が早いが、
そうで無い場合は、発見が遅れる事が多い。
特にマンションは、外との接点が玄関だけだから、玄関ドアが固く閉ざされていた場合には分からない。
マンションで二世帯が居住する事は物理的に不可能だ。
だから近年老夫婦世帯が増えている。子供世帯は違う所に居を構えている。
やがて伴侶を失い、老人の一人世帯になり、他に知られる事も無く鬼籍に入ることになる。
孤独死を防ぐ様々方策が講じられているが、中々広まっていない様だ。
団塊の世代が老人世代に入り、今後ますます孤独死案件が増えるのだろう。
戸建てなら建物を取り壊して、土地で売却する事もできるが、
分譲マンションの場合は、そういう訳にも行かない。
孤独死物件は、安く売りに出されて転売さ入れるか、賃貸住宅にされる事が多い。
また一時賃貸にした後に売却される事もある。
賃貸と言っても、現在はその旨告知しなければならないから、
家族や親戚名義で、実際には住まなくても賃貸したように見せかけた後、
次の賃借人に貸すか、売却される。
遺族が物件を相続放棄するケースも少なくない。
相続放棄された物件は、やがて公売物件となって誰かが落札する。
消毒はウチのメンバーが誰もやりたがらないから、仕方なく俺がやる事になった。
数珠を持って、粗塩で清めた上で執り行うことにする。
何も災いが起きませんように。