勝手にぶつぶつ

俺の悪口を言っている奴がいるらしい。
知り合いの不動産屋が教えてくれた。
話を聞いて直ぐに悪口を言っている奴が誰か分かった。
そいつは以前から、
俺の悪口を言っている事を仄聞していたが、
俺は気にも相手にもしていない。

悪口を言っている奴は元同僚で長い付き合いがあった奴だ。
奴は不動産ブローカーで、
以前仕事を手伝ってやった事がある。

そいつは調子に乗るタイプで、
虎の威を借る狐を良くやる。
あちこちでやかして立場を悪くしている。
俺にも恩をあだで返す様な不義理をしやがったから、
以降俺はそいつを相手にしなくなり、
奴は俺から自然と離れて行った。

風の噂では今奴は、
仕事が無くてかなりしょっぱい状態にあるらしい。
俺の知り合いの不動産屋に何とか入り込もうとしているという話も聞いた。
しかしそれもかなわず、
相変わらず不動産ブローカーをやっている。

首都圏郊外の不動産市場は、
少子高齢化の影響が出て非常に悪い。
業界全体が縮小傾向にある。

堅気の不動産屋だって中々きびしいのに、
免許が無い不動産ブローカーなんてもっと厳しい。

そこで奴は俺を含め、
そいつを取り巻く周りの人間を悪者にして自分を正当化し、
何とか仕事を得ようとしてるみたいだな。
それで俺の悪口を言っている様だ。

俺はこの所、
そいつが厳しい状態にある事を聞いていたから、
俺の仕事を手伝わせてやろうと仏心を出していたが、
俺の悪口を言っている事を知って、
手を差し伸べるのを止めた。

周りの業者は、
そいつが言う俺に対しての悪口を真に受けていない。
だから俺に情報を寄越したのだ。
奴は自分を優位に見せたくて俺の悪口を言っているのに、
それはむしろ、
自分のクビを締めている事に気が付いていない。

哀れな奴だ。

俺は悪口を言われたからと言って、
そいつに何か言う事もする事も無い。
ただ関わらない様にするだけだ。

事実はひとつで、
周りの不動産屋は真実を知っているから、
俺が言い訳を言う必要も無い。

その内奴は、
自然に淘汰されてしまうのだろう。
まじめにコツコツやっていればよかったものを、
バカな奴だ。