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キツネ男

キツネ男。

昔付き合いのあった大工だ。
歳は俺より一回り以上上だ。
奥さんと子供二人が居た。

北海道の田舎出身で、高校を卒業して北海道で大工になって、
昭和の終わりに上京してきた。
性格は一言でいったら「小賢しい」だ。

本人は「俺は道産子のヒグマだ。」と言っていたが、
俺は「キツネ男」だと思っていた。

男三人兄弟の真ん中で、長男は北海道でホタテ漁をしていて
そこそこの収入があるらしい。
弟は、どこかで商売をしていて、こちらも成功しているそうだ。

本人だけはどうしようも無い状態だった。

大工の腕としては良かった。仕事にこだわりも持っていた。
ただ、山っ気があって、
大工仕事以外は、物事をごまかして進めようとする傾向が強かった。

俺と知り合った時は、
既に社長が死亡して、事実上機能していない会社を名乗っていた。
当然税金などマトモに支払っていない。
俺と知り合って程なくして、その会社を使うのはやめて、
自分で会社を立ち上げた。
と言っても、事務所も何も無い、自宅を本社として登記しただけだったが。
その頃、俺の世話でマイホームも取得した。

しかし、そんな事をやってきた男だから、信頼を築き上げると言う事はできなかった。
主に金銭的なトラブルで関係を壊して来た男だから、
社会的な信用とか信頼とかがある男ではなかった。
ただ、大工としての腕はよかった。

そんな奴と数年仕事をしたが、
やくざ者から金を借りて返済に詰まった。
その時に俺を騙して、施主から金をせしめようとした。
施主は俺の友達だったから、その事は直ぐにバレた。
それが切っ掛けで、そいつの関係が切れた。

ヤクザから借りた金が全額返済できなかった様で、
ヤクザから追われる身になった。

奴は家族を日本に残して、
フィリピンに居ると言う話を風の噂で聞いた。
何でも山下財宝を探しているとの事だw。

その後日本に舞い戻ってきて、
どこかの現場に居たと水道屋から聞いた。

だから俺は国内で大工の仕事をしているのだと思っていた。

そしたら先日、サッシ屋から奴の噂を聞いた。
今は中国にいるらしい。

マイホームは破綻したのだろう。
奥さんは子供と家を出たらしい。

今年齢は60歳をとうに越えている。
おそらくヤクザに追われて中国に逃げて、
向こうで棟梁でもやっているのかも知れない。
中国人を手玉に取るぐらいの事は、
簡単にやる男だから。

もう日本には帰って来ないかもしれない。
ってか、日本に戻っても、帰る場所が無いから、
帰るにも帰れないだろう。

キツネ男。奴は中国の土になるのだろう。

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